不貞行為がない場合にも慰謝料は発生するか
1 不貞行為がない場合であっても慰謝料が発生する可能性はある 2 不貞行為の存在を疑わせる出来事があったというケース 3 性的関係には至らないものの肉体的な接触があったというケース 4 夫婦間の協力義務の放棄(悪意の遺棄)があったというケース
1 不貞行為がない場合であっても慰謝料が発生する可能性はある
法律上、不倫慰謝料が発生するためには、不貞行為の存在が必要とされます。
不貞行為とは、不倫をした配偶者と不倫相手との間における性的関係のことです。
もっとも、不貞行為がなかったとしても、不倫をした配偶者と不倫相手との間の何らかの行為により、不倫をされた配偶者に精神的な損害等が生じた場合には、不倫慰謝料とは別の慰謝料が発生する可能性があります。
主なケースとしては次のようなものが挙げられます。
①不貞行為の存在を疑わせる出来事があったというケース
②性的関係には至らないものの肉体的な接触があったというケース
③夫婦間の協力義務の放棄(悪意の遺棄)があったというケース
以下、それぞれについて詳しく説明します。
2 不貞行為の存在を疑わせる出来事があったというケース
不倫相手との間で、スマートフォン等で恋愛関係にあるようなメッセージのやり取りがある場合や、会食や旅行をしていたという場合などが挙げられます。
性的関係があったことまでは証明できないという状況であっても、不倫をされた側の配偶者の立場としては、平穏な夫婦生活を送る権利を侵害されたといえるケースもあります。
このような場合、慰謝料請求が認められたという裁判例も存在します。
3 性的関係には至らないものの肉体的な接触があったというケース
性的関係とまではいえないものの、不倫をした配偶者と不倫相手との間において肉体的な接触が多く存在しているという場合に、慰謝料の支払いを認めた裁判例があります。
ただし、肉体的に強い接触があったものの、性的関係になかったと認定されることは、一般的にはあまりないと考えられます。
上述の裁判例では、不倫をした配偶者が性的不能であったという特殊な事情がありましたので、肉体的な接触があったが性的関係にはなかったとされたと考えられます。
4 夫婦間の協力義務の放棄(悪意の遺棄)があったというケース
配偶者と不倫相手との関係が深まると、自宅に戻らなくなる、家事や育児をしなくなる、生活費を入れないということが起き得ます。
このような行為は、夫婦間の協力義務の放棄にあたり、法律上離婚の原因にもなり得る悪意の遺棄に該当することから、慰謝料が発生することがあります。